第76回カンヌ国際映画祭(2023年)のワールド・プレミアや今年の東京国際映画祭のワールド・フォーカス部門内でラテンビート映画祭との共催企画として上映され話題となったペドロ・アルモドバル監督の最新作で西部劇の『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』、スペインの鬼才J・A・バヨナ監督作で第96回(2024年)アカデミー賞国際長編映画賞スペイン代表に選出されたNetflix映画『雪山の絆』、キューバ革命10周年を機に日本とキューバで共同製作された黒木和雄監督作『キューバの恋人』、石原裕次郎がスペインを舞台に闘牛に魅せられた男を熱演した『闘牛に賭ける男』の4作品を上映いたします。
今回上映される作品の『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』で監督を務めたペドロ・アルモドバルは、2004年公開の『バッド・エデュケーション』で記念すべき第1回ラテンビート映画祭(2004年)のオープニングを飾りました。また、津川雅彦主演作『キューバの恋人』は第8回(2011年)にて、石原裕次郎主演『闘牛に賭ける男』は第9回(2012年)のラテンビート映画祭で上映された作品となります。そして『雪山の絆』は、第15回(2018年)のラテンビート映画祭で上映した『I Hate New York』を製作プロデューサーとして関わったJ・A・バヨナ監督(『インポッシブル』『永遠のこどもたち』『ジュラシック・ワールド/炎の王国』)が、14年ぶりに母国語スペイン語で制作した作品。実際に起きた遭難事故を基に極限の状況に置かれた人々が直面する恐怖と葛藤、そして生への渇望と強い絆を極上の人間ドラマとして描いています。来年1月4日(木)からNetflixでの世界独占配信に先駆けて先行特別上映となります。
映画館での貴重な上映企画となりますので、是非この機会に劇場でご鑑賞ください。
カンヌ国際映画祭でワールド・プレミア上映され、クィア・パルムと短編賞にノミネートされたペドロ・アルモドバル監督の最新作。『ビフォア・ミッドナイト』(13)、『6才のボクが、大人になるまで』(14)のイーサン・ホークと「ナルコス」(15~17)、「マンダロリアン」(19~23)のペドロ・パスカルという実力派スターの共演で、再会したふたりのガンマンの愛憎が描かれる。
シルバは25年ぶりに友人のジェイク保安官を訪ねるため、馬を走らせて砂漠を横断する。ふたりは再会を喜び合うが、翌朝ジェイクは、シルバがやってきた本当の理由は、友情の思い出をたどるためではないのだろうと告げる……。
アルモドバルは、1998年の『オール・アバウト・マイ・マザー』でアカデミー賞外国語映画賞を、2002年の『トーク・トゥ・ハー』でアカデミー賞脚本賞を受賞したオスカー監督。LBFFでは『バッド・エデュケーション』(04)が第1回のオープニングを飾り、第8回に『私が、生きる肌』(11)が、第10回に『アイム・ソー・エキサイテッド!』(13)が上映されている。
2022年1月──今年で18年目を迎えた「ラテンビート映画祭」では新たな試みとして、日本未配給のスペイン語・ポルトガル語圏の名作を中心に紹介する常設の配信チャンネル「ラテンビート・クラシック『CANOA(カノア)』」をオープンします。
「ラテンビート・クラシック『CANOA』」では、以下のようなプログラムを予定しています。
1940年代から80年代に掛けて製作された、スペイン語・ポルトガル語圏の数々の古典的傑作を配信します。ルイス・ブニュエルやフアン・アントニオ・バルデムと並ぶ、今年生誕100周年を迎えたスペインの巨匠監督ルイス・ガルシア・ベルランガの代表作に加え、スペイン、ポルトガル、1940~50年代の映画黄金時代のメキシコ、アルゼンチン、チリなど、各国の作品を予定しています。
これまでの劇場での上映展開では実現が難しかった「特集上映」をオンラインで実施します。ホラー映画やエロティシズム作品をはじめとする多彩なジャンル特集や、特定の映像作家に絞ったレトロスペクティブ(回顧特集)など、多くの特集プログラムを企画しています。
2004年のラテンビート映画祭のスタート時、日本ではまだそれほど多くはスペイン語・ポルトガル語圏の映画を鑑賞することはできませんでした。しかし、NetflixやAmazon Prime Videoなどのデジタル配信サービスの隆盛によって、現在は多くの作品を手軽に観られるようになりました。“スペイン語・ポルトガル語圏の注目作をいち早く紹介する”という、本映画祭が持つ本来の意味にも変化が及んでいる今、私たちはオンラインでも“新たな映画祭”にチャレンジすることにしました。
劇場で開催する従来のラテンビート映画祭の形に加え、この新しい試みにもどうぞご期待ください!
“CANOA(カノア)”は、“トマト”や“ポテト”、“カカオ”のようなラテンアメリカ・カリブ海地域の先住民の言葉が由来のスペイン語で、いまや世界中に広がっている言葉です。多くの言語で「小さな舟」を指すものとして知られています(カヌー[CANOE]の語源とも言われています)。
私たちはこの“CANOA”に、コロナ禍がもたらした数多の問題を乗り越え、文化を西から東へと幅広く運んでいく媒体としての願いを込めました。
ルイス・ガルシア・ベルランガ(Luis García Berlanga)ほどスペイン社会を正確に描いた映画人はあまりいない。それも、これほど質の高い脚本と映画的技法をもって実現した者となるとなおさらだ。彼の作品を称えることは、前世紀のスペイン文化の全域を称えることであり、スペインと多少なりとも近い他の文化および映画的形式を融合できるスペイン文化の力量を称えることでもある。ベルランガは、スペインの最も優れた文学、演劇、さらには造形芸術に自らの根を張るクリエーターだ。だが同時に、彼が活躍した期間のさまざまな瞬間に、世界の映画界で起きていたあらゆることにしっかりと目を向けた人物でもある。ベルランガは世界を理解していた。それも自分が生まれ育った場所から世界を理解した映画人であった。
50年間に及んだ活動期間中、ベルランガは、その作品が多くの問いを投げかけるものであることから厳しい検閲にかけられたこともあった。だがやがてスペインが民主化に向かうと、変わりゆく時代の旗手となった。1978年から1982年にかけて国立映画図書館の代表を務め、スペイン映画芸術科学アカデミーの創設メンバーでもあった。ベルランガは、優れた演出をする監督であり、作中、役にはまっていない俳優は一人としてなく、全員が常に調和のなかにある。また、彼はカメラ回しの名手でもあった。
監督した長編映画は全17作。「ベルランギアーノ」という形容詞は、「コミカルでシュールな」を意味し、それはペドロ・アルモドバル監督の作品に色濃く見られる要素でもある。
今回配信される作品「Bienvenido, Mister Marshall!」「Plácido」「El verdugo」は、ベルランガの最も有名な3作であり、このたび初めて日本語字幕付きで紹介される。
出典:スペイン国立映画図書館(Filmoteca Española)制作の小冊子より、一部抜粋・編集・加筆・翻訳